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- 脊椎(背骨)は、体を支えて動かす役割に加え、脳からの指令を伝える大切な神経を守る重要な機能を担っている。
- 脊椎は適度なS字カーブを保つが、加齢や悪姿勢で歪むと、腰痛だけでなく手足のしびれや麻痺等の障害が生じる。
- 疾患予防には体幹運動が効果的。手足の痛みや歩行障害などの不調が現れた際は早期の専門医受診が大切。
脊椎とは、いわゆる「背骨」
一般に「背骨」と呼ばれる骨のことを、医学用語では「脊椎」といいます。
人間のみならず、脊椎を持っている動物のことを「脊椎動物」といい、脊椎動物は魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類に分類されます。
脊椎動物には、「背骨を中心とした骨格を持つ」「骨格に付着した筋肉を働かせることによって運動する」という特徴があります。
人間の場合、脊椎は首からお尻までつながっており、成人では、その長さは40cm以上にもなります。
脊椎は椎骨という骨が連結して構成されており、脊椎は部位によって以下のように分類されます。
- 頸椎 首の骨。7個の椎骨で構成される
- 胸骨 胸の骨。12個の椎骨で構成される
- 腰椎 腰の骨。5個の椎骨で構成される。


これらに、仙骨と尾骨を加え、一般には「脊柱」と呼んでいます。(*1)
脊椎は、人間が活動をする上で重要な役割を担っています。その役割は、主に以下の3つに分類されます。
- 体を支える(支持)
- 体を動かす(運動)
- 神経を保護する(保護)
椎骨は、前方に支柱となる椎体があり、その後ろには脊髄が通る脊柱管があります。
脊髄は脳から連続する中枢神経であり、脊柱管にそって保護されながら、脳からの指示を全身へ伝えています。
そして、脊柱管の後方には椎弓と呼ばれるリング状の組織があり、椎弓と椎体は椎弓根によって繋がっています。


椎骨と椎骨の間には椎間板と呼ばれる柔らかい組織があり、いわばクッションの役割を果たし、椎骨と椎骨がぶつかり合う際の衝撃を吸収しています。
椎間板の中心には、水分を多く含むゼリー状の組織があり、これは髄核と呼ばれています。
また、その周囲は丈夫な外層で覆われており、この部分は線維輪と呼ばれています。
このように、背骨はたくさんの要素によって構成されています。
しかし加齢などを原因として椎間板が変性したり、日常的な悪い姿勢がきっかけとなって脊椎が歪んだりすると、体にさまざまな不具合が生じます。
特に、脊柱管には脳からの指令を伝える大切な神経である脊髄が走っており、脊椎がダメージを受けることでこの神経も影響され、体に多くの神経症状を引き起こすことがあります。
こうした疾患のことを、脊椎脊髄疾患と呼びます。
(*1)公益社団法人 日本整形外科学会
渡邊 太 医師
脊椎は体の中心部分を支えながら、体を曲げる・反らす・ひねるなどの複雑な動きを行うために必要な骨です。神経を保護する役割も担っています。腰という漢字の中に要(かなめ)と入っているように、脊椎は人体にとって非常に重要です。
脊椎を構成する3つの部位の仕組みと働き
先述したように、脊椎は部位によって「頸椎」「胸椎」「腰椎」という3つのパーツに分類されます。
ここでは、それぞれの仕組みや働きを解説します。
1. 頸椎
頸椎とはいわゆる「首の骨」であり、7個の椎骨が連なって構成されています。
一番上の椎骨から順番に、第一頸椎、第二頸椎…というように命名されています。
頸椎は人間の脊椎のなかでもっとも可動域が大きく、たとえば、首をまっすぐに伸ばして頭だけを動かすときには第一頸椎と第二頸椎が可動域を決定しており、また、頚部の可動域を担うのは第三頚椎以下とされています。
頭はおよそ体重の約10%と言われていることから、たとえば体重50kgの人では、約5kgの頭を頚椎で支えていることになります。
さらに、頚椎にかかる負担は首を屈曲させたり、前に突き出したりなど、頚椎の姿勢によって大きく変わってきます。
そのため、頚椎は普段の姿勢の影響を大きく受け、痛みや圧迫が出やすい部位とされています。(*2)
また、頚椎の形状は、頚部の姿勢だけでなく、全身の姿勢の影響も強く受けています。
一般に、脊椎は重量のある頭を支えるために、適度なS字カーブを描いています。
これは生理的弯曲と呼ばれ、頚椎はやや前弯(前方に約20度凸型)、胸椎はやや後弯(後方に約20~40度凸型)、腰椎はやや前弯(前方に約35~60度凸型)であるのが良いとされています。
この3つのカーブがあるおかげで、人間は頭の重量を適度に分散させることができるのですが、たとえば重心が後方へ移動すれば頚椎は後弯することになり、反対に、重心が前方へ移動すれば、頚椎は前弯してしまいます。
これにより、痛みやこりなどさまざまな身体症状が出現するのです。


(*2) 解剖から理解する頚椎診療
2. 胸椎
胸椎とは「胸の骨」のことであり、頚椎の下の部分から腰椎の上の部分までを意味します。
12個の椎骨によって構成され、脊椎の中央に位置することから、力学的には非常に安定性を維持する部位になります。
一番上から第一胸椎、第二胸椎…と呼ばれます。
人間の胸の骨格のことを胸郭といいますが、これは、12個の胸椎のほか、12対の肋骨と、1個の胸骨によって構成されています。
前面に胸骨があり、そこに肋骨が連なり、背中側で胸椎と連結しています。ただ、11、12番目の肋骨の前方は胸骨にはくっついておらず、骨の末端が浮いている状態のため、「浮肋(ふろく)」とも呼ばれています。
胸郭はちょうど鳥籠のような形をしていて、その内部には心臓や肺など、重要な臓器が収まっています。
つまり、胸郭はそれらの臓器を守っており、そのほか腹腔内の肝臓、脾臓、腎臓の一部も保護する役割を担っています。(*3)
胸椎の特徴は、可動範囲が狭いということです。
なぜなら肋骨や胸骨とともに鳥籠のような構造となっているため、強固に固定されており、胸椎のみが自由に動ける範囲は非常に少ないのです。
可動域が狭いということは、その分、ずれやすべりなどの症状を引き起こすことが少ないということであり、そのため第11、12胸椎を除けば、日常的に胸椎が損傷を受けることは、頚椎や腰椎に比べてそれほど多くありません。
また、頚椎や腰椎に比べ、動きが固定されているため加齢による変性の影響を受けにくく、高齢になってもあまり障害が起きにくいとされています。(*4)
とはいえ、肋骨骨折などの外傷が起きることもあるので注意が必要です。
(*3)一般社団法人 日本骨折治療学会
(*4)一般社団法人 日本脊髄外科学会
3. 腰椎
頸椎、胸椎に続く部分を「腰椎」といい5つの椎骨で構成されています。
他の部位と同様、一番上にある椎骨から第一腰椎、第二腰椎…と命名されています。
腰椎は体重を支えるのに非常に重要な部位であり、頸椎や胸椎に比べ、大きな負荷がかかります。
そのため他の部位に比べ、大きな椎体によって構成されています。(*5)
腰椎は上半身を支えるだけでなく、前後や左右へ大きく屈曲したり、身体を回旋させたりなどさまざまな日常動作をサポートしています。
腰椎の特徴は、頸椎や胸椎に比べ、最も可動域が狭いということです。
頸椎が回旋するときの可動域は45〜50度と大きく、胸椎は30〜35度と言われています。胸骨は肋骨に囲まれ、鳥籠のような形状になっているため、本来、可動域は高くても実際には動かしにくいという問題がありますが、本来であれば、それくらい自由度が高いのです。
それらに比べ、腰椎はわずかに5〜15度しかありません。
そのため、不自然な姿勢を長時間続けることなどにより、胸椎がガチガチに固まってしまい、回旋が制限されてしまうと、腰椎で代償動作を行わなければならず、腰痛などの症状を引き起こしやすくなるのです。(*6)
また、腰椎は頸椎や胸椎に比べ、怪我などを起こしやすいという特徴があります。
なぜなら、腰椎は上半身と下半身の中間にあり、どちらからの負担もかかる部位であるためです。
また、慢性的に負荷が蓄積することにより、高齢になってからさまざまな症状に悩まされることも多いほか、腰に負担の多いスポーツや労働を長期にわたって続けることで影響を受けやすい部位であるとも言えます。
特に、故障をしやすいのは第3腰椎から仙椎にかけての部位です。
この部分は人体の構造上、大きなカーブを描いており、最も衝撃を受けやすいのです。
また、人間のS字カーブは第11胸椎から第1腰椎にかけての部位をちょうど中間地点としているため、この部分にも負担がかかりやすく、たとえば骨粗鬆症に伴う圧迫骨折はこの部分に多く発症するとされています。(*5)
(*5)一般社団法人 日本腰痛学会
(*6)TISとちぎスポーツ医科学センター
渡邊 太 医師
脊椎には生理的に理想的な弯曲が形成されています。横から見たときに、首の骨は前側にカーブし、背骨は後ろにカーブしてSの字状になっています。腰骨は前側にカーブしており、背骨から腰骨にかけては逆S字状になっています。これが人体を支えるために理想的な形です。しかし加齢などにより脊椎が変形して生理的弯曲が失われると、痛みや神経障害をおこしてしまう可能性があります。
脊椎の主な疾患と症状
脊椎は人体において、非常に重要な役割を果たす部位です。また、「歩く」「走る」「座る」「階段を昇降する」といった日常生活においても、脊椎は動作を促したり、全身のバランスを支えたりしており、「脊椎が健康的であることが、人間のQOLを高く維持するためには重要」といっても過言ではありません。
しかし現実には、脊椎にはさまざまな疾患やトラブルが起こり、長期にわたってリハビリや矯正、運動療法に取り組むなど、根気良く治療を行わなければならないことも少なくありません。
また、「背骨が痛い」といっても、痛む部位によっては問題が頸椎にあるのか、それとも腰椎にあるのかなど原因が異なります。
ここでは一般に多く見られる脊椎疾患を取り上げ、その概要を解説します。
1. 腰痛
腰痛は脊椎疾患の中でも非常に一般的なものであり、多くの人が抱えている症状です。
厚生労働省が行う国民生活基礎調査では有訴者率(自覚症状の状況)においても、また、受診率においても腰痛は上位を占めており、日本整形外科学会が発表した全国調査の結果によれば、過去 1か月間の腰痛の有病割合は、男性 29.2%、女性 31.8%、全体では、30.6%にものぼりました(腰痛の有無に関わらず、日本国民から無作為抽出された成人集団約 4500 人が対象)。(*7)
また、厚生労働省が行った国民の自覚症状の調査(平成28年度)では、腰痛を訴えた人は男性では1位、女性では2位であり、全体では1位となっています。(*8)
ここで注意したいのは、腰痛はあくまでも症状であり、疾患名ではないということです。
そのため、腰痛が起きている背景には、何らかの疾患が起きていることに注意しなければなりません。(*9)
一般に腰痛を引き起こす疾患には、一例として、以下のものがあります。
腰椎椎間板ヘルニア
腰部の椎骨と椎骨の間でクッションの役割を果たしている椎間板が変性し、組織の一部が飛び出した状態のこと。飛び出した椎間板の一部が付近の神経を圧迫し、腰に激しい痛みを引き起こす。
脊椎分離症・すべり症
脊椎分離症とは脊椎の関節突起間部といわれる部位(椎弓の狭くなった部分)で骨の連続性が絶たれ、分離してしまった状態のことをいう。
大きく分けて2つあり、主に加齢などが原因となって椎間板が変性したことで起きる「変性すべり症」と、体が柔らかい中学生の頃などに、激しいスポーツなどで疲労骨折した部分に亀裂が入り、そこからずれが生じたことで起きる「分離すべり症」に分類される。(*10)
腰部脊柱管狭窄症
加齢により脊柱や椎間板、黄色靭帯などが変性することによって神経の通り道である脊柱管が狭くなり、その中を走る神経が圧迫されて下肢の痛みや腰痛などを引き起こす疾患。50歳代以降から徐々に増える。(*8)


そのほかにも、悪性腫瘍(癌)の転移、化膿性脊椎炎、脊椎カリエス(結核)、外傷(圧迫骨折など)、脊柱後弯症、側弯症などが腰痛の原因となることがあります。
また、これらの疾患のように、画像検査などを行って原因が特定できる腰痛もあれば、原因を特定することができない腰痛もあります。
「腰痛診療ガイドライン 2012」では、前者を「特異的腰痛」、後者を「非特異的腰痛」としています。
このガイドラインでは欧米の権威ある雑誌に発表された論文を引用し、「非特異的腰痛が腰痛の85%を占める」と記載されていましたが、その後研究が進み、「腰痛の75%以上で診断が可能であり、診断不明の非特異的腰痛は22%に過ぎなかった」という報告もあります。
一時期、メディアでも「腰痛の半数以上が原因不明」と伝えられたこともありましたが、その考えは改められ、現在では「非特異的腰痛の扱いには注意すべき」という見解が一般的となっています。(*11)
(*7)腰痛に関する全国調査報告書2003
(*8)一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
(*9)一般社団法人 日本腰痛学会
(*10)公益社団法人 日本整形外科学会
(*11) 腰痛診療ガイドライン改訂版
2. 手足のしびれ
脊柱の一部の疾患では、手足のしびれなどの症状を引き起こします。
これは脊椎の変性などにより、脊髄や坐骨神経が圧迫されることによって神経症状が起きているためであり、どこにしびれが生じているかによって、ある程度、原因を推測することが可能です。
手足のしびれを引き起こす脊椎の疾患には、一例として以下のものがあります。
頚椎症
加齢とともに頸椎の椎間板や骨の周辺組織が変性して起きる。主に40歳代以降に増え、椎間板の老化が進むと水分量が減少して柔軟性も失われる。それに伴って頸椎が変形し、神経が圧迫されることによって生じる。
脊髄が圧迫されると頚椎症性脊髄症、脊髄からわかれて上肢へゆく「神経根」が圧迫されると頚椎症性神経根症という。(*12)


後縦靱帯骨化症
OPLL(ossification of posterior longitudinal ligament)ともいい、難病に指定されている疾患。脊柱管の前方部分の靭帯「後縦靭帯(こうじゅうじんたい)」が骨化することで脊髄の入っている脊柱管が狭くなり、脊髄や脊髄から分枝する神経根が圧迫され、手足のしびれなどが生じる。(*13)
脊髄腫瘍
脊髄や、脊髄神経、また、それらを包んでいる硬膜などに発生する腫瘍の総称。腫瘍が発生する場所により、硬膜外腫瘍、硬膜内髄外腫瘍、髄内腫瘍に分類される。脊髄腫瘍の発生頻度は10万人あたり1.5人程度と非常に稀な疾患であるが、発症すると痛みやしびれ、手足の脱力などを引き起こし、進行すれば歩行障害、排尿障害を引き起こすこともある。(*14)(*15)
そのほか、先述した腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症も、脊髄神経が圧迫されることによって手足のしびれを生じさせることがあります。
(*12)公益社団法人 日本整形外科学会
(*13)難病情報センター
(*14)一般社団法人 日本脊髄外科学会
(*15)一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
3. 手足の運動障害、麻痺
脊椎の疾患により、手がしびれて動かせない、ものをつかめない、箸が使いにくくなった、ボタンをとめにくくなった、細かい作業が苦手になったなどの症状が出ることがあります。


このように、こまかい指の動きが苦手になる運動の障害のことを「巧緻運動障害」といい、これらは「2.手足のしびれ」で解説した頚椎症性脊髄症の典型的な症状とされています。
また、足に運動障害が起きることもあります。
その場合には、たとえば「よろけやすく、歩行が不安定になった」「歩きにくい」「階段を降りる時に手すりを掴まないと不安」「つま先立ちがやりにくくなった」「スリッパが脱げやすくなった」など、感覚障害や筋力低下などが起こります。
脊椎疾患としては、以下のものが考えられます。
- 頚椎症
- 後縦靭帯骨化症
- 黄色靭帯骨化症
- 脊椎腫瘍
- 脊髄腫瘍
- 椎間板ヘルニア
- 腰椎分離症、腰椎すべり症
- 腰部脊柱管狭窄症 など(*16)
これらのうち、黄色靭帯骨化症とは難病に指定されている疾患で、脊髄(神経)の後ろにある黄色靱帯が骨化し、肥大化することによって神経を圧迫することをいいます。
それにより、主に足の麻痺が引き起こされます。(*17)
(*16)一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
(*17)難病情報センター
4. 歩行障害
歩行障害を引き起こす疾患には、さまざまなものがあります。
脳神経疾患や、脊髄や筋肉に問題がある場合、また、心因性の歩行障害などがありますが、そのうち、脊椎に原因があるものとしては、代表的なものに腰部脊柱管狭窄症があります。(*18)
これは「1.腰痛」でも解説した通り、背骨が変形することによって脊柱管が狭くなり、その中を走っている神経が圧迫される疾患のことをいいます。
腰部脊柱管狭窄症を発症すると、主に以下の症状が起こります。
- 歩行障害
- 坐骨神経痛
- 下肢のしびれ感
- 股間のほてり
- 残尿感や便秘などの膀胱直腸障害
こうした症状は、じっとしているときにはあまり見られず、立ったり歩いたりするときには症状が出現し、特に歩行時に強くなります。
腰部脊柱管狭窄症に見られる歩行障害として典型的なのは、間欠性跛行(はこう)です。
これは、歩いている途中で足が痛くなったり、重くなったり、疲労感が強くなったりして、歩けなくなる状態のこと。
しばらく休むとまた歩くことができますが、長時間歩き続けることが難しくなり、日常生活にも支障をきたします。


症状が出たときは、一旦立ち止まって前屈みになると楽になるのが特徴で、お尻から両足全体にかけ、症状が出現するという傾向が見られます。
(*18)一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
5. 上肢痛
脊椎の疾患により腕や手などの上肢に痛みが出ることがあります。
上肢痛を引き起こす疾患には、一例として、以下のものがあります。
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 頚椎症
- 後縦靭帯骨化症(*19)
- 頚部脊柱管狭窄症(頸椎狭窄症)
「1.腰痛」では腰椎椎間板ヘルニアを原因としてあげましたが、上肢痛の場合には、頸椎の椎間板ヘルニアが疑われます。
頸椎椎間板ヘルニアも、腰椎のヘルニアと同様に、骨と骨の間の椎間板が飛び出し、脊髄や神経根を圧迫することにより症状を引き起こします。
しかし腰椎の場合には腰や臀部など、下肢に痛みが生じますが、頸椎の場合には上肢に症状が出るのが特徴です。
頸椎椎間板ヘルニアを発症すると、首、肩甲骨、腕などに痛みを生じさせ、さらに病態が進行すると、手足のしびれが生じたり、手や足の動きが悪くなったりして、転びやすくなるなど運動機能の障害が起きることもあります。(*20)
なお、椎間板ヘルニアは胸椎でも起きることがありますが、頸椎や腰椎に比べて頻度はまれであり、発症する確率は年間100万人にひとりの割合という報告もあります。
胸椎椎間板ヘルニアが起きると、後方にある脊髄が圧迫されるため、両下肢の運動障害や感覚障害、排尿排便障害が生じることもあります。
ただし、頸椎椎間板ヘルニアや腰椎椎間板ヘルニアのような強い神経痛は伴わないことが多いという特徴があります。(*21)
また、腰部脊柱管狭窄症同様、頚部の脊柱管が狭窄することによって起きる頚椎狭窄症により、手のしびれや痛みが生じることもあります。
(*19)一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
(*20)公益社団法人 日本整形外科学会 頸椎椎間板ヘルニア
(*21)一般社団法人 日本脊髄外科学会
6. 下肢痛
股関節から足先までの、下肢に痛みを生じさせる脊椎疾患には、一例として以下のものがあります。
- 腰部脊柱管狭窄症
- 腰椎椎間板ヘルニア
- 腰椎分離症 (*22)
これらのうち、高齢者に多く見られるのは腰部脊柱管狭窄症であり、若年者では腰椎椎間板ヘルニアや腰椎分離症が多く見られるという傾向があります。
そのほか、寝ている時や安静時にも下肢痛が起きる場合には、背骨の腫瘍や神経の腫瘍、炎症などが起きていることもあるので、速やかに脊椎脊髄病に詳しい専門医の診察を受けることが必要です。
(*22)一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
7. 頚部痛
首の痛みは幅広い年代に見られる一般的な症状であり、平成28年の厚生労働省の報告によれば、有訴者率では、女性で1位、男性では腰痛に次いで2位という結果になっています。
特に、生活習慣や労働環境、普段の姿勢などによって頸椎の痛みを生じることが多く、普段は見逃している人も多いかもしれません。
しかし、整形外科の疾患のほか、うつ病、内臓の疾患、眼科や耳鼻咽喉科、歯科の疾患が頚部痛の原因になっていることもあるので、長く続く場合には専門医を受診し、原因を明らかにすることが必要です。
頚部に痛みを生じさせる脊椎の疾患には、一例として以下のものがあります。
- 頚椎椎間板ヘルニア
- 頚椎症性神経根症
- 頚椎症性脊髄症
- 後縦靭帯骨化症
- 悪性腫瘍(癌)の転移 など (*23)
(*23)一般社団法人 日本脊椎脊髄病学会
渡邊 太 医師
医療機関を受診される患者さんのうち約6割の症状が腰痛と言われており、国民病と言っても過言ではありません。
腰の神経は足につながっているため、腰が悪くなると腰痛だけでなく足の痛みや痺れが生じることもあり、歩行や日常生活に支障が出てしまいます。
また、首の脊髄神経は脳から直接分岐しており、手足の動きや感覚を司る非常に重要な神経です。首の神経が障害されると、手足の麻痺や歩行障害などがおこり、後遺症となる恐れもあります。そのため神経障害が認められた場合、なるべく早急な治療が必要です。
おわりに
脊椎は人間が日常生活を送る上で、もっとも重要であり、大事な役割を果たしている分、負担が積み重なり、疾患を発症させることも少なくありません。脊椎の疾患は運動機能を低下させるだけでなく、神経障害やQOLの低下を招くこともあります。気になる症状があれば、早めに専門医を受診するようにしましょう。
渡邊 太 医師
日々人体を支えて神経を保護している脊椎は非常に重要です。 長年体を支え続けることで加齢に伴う脊椎が傷んでしまうことはどうしても 避けられず、痛みや痺れなどの様々な症状がおきてしまう可能性があります。 まずは脊椎がなるべく元気な状態を維持できるよう、腹筋や背筋など体幹の筋肉を鍛えたり、ウォーキングやストレッチなどの運動を行うことが非常に重要です。しかし、手足の痛み痺れ、首や腰の痛み、歩行障害などの症状が出てしまった場合、放っておくと重症化する恐れもあります。何か困った症状があれば、なるべく早く医療機関を受診してください。



